夫婦関係を円満にするために。
長年、人の話を聞いてきて思うことは、
「日本全国サザエさん化」
すればいいんじゃないかということ。
そうすれば、かなりの夫婦は円満になると思うのです。
今回の話は、まだ修復が可能だな、話し合えば何とかやれそうぐらいの状態の方へ。
サザエさんの前に山内一豊の妻の話を少し
「日本全国サザエさん化」と言いつつ、別の女性の話から入って恐縮です。
マメムの愛読書の一つに、
「功名が辻 司馬遼太郎著」という本があります。
山内一豊の生涯を描いた歴史小説です。
ストーリーには、全く関係ない一文を少し引用しますね。
秀吉は、ばつの悪そうな顔で座っていた。千代はそれを見るとわれをわすれて気の毒になり、「ばあっ」という顔をして、舌を出してみせた。秀吉は、とびあがって笑った。「千代、千代」笑いころげながら、「そなたは名将だ」といった。
これは、かの有名な豊臣秀吉が、山内一豊の妻である千代にいけないことをしようとして失敗したときの話です。
いけないことは、自分で想像してくだされ。
茶の湯の茶釜が、逃げようとした千代の足に触れ、たぎっている湯が豪快にこぼれます。
秀吉は、仕方なく千代を離します。
秀吉のバツの悪さときたら…。
二人とも何とも気まずいことです。
その後、こぼれた湯を拭くために、布巾を取りに行った千代は、戻るなり、「ばあっ」と舌をだします。
おどけた顔で秀吉を笑わせるのです。
秀吉曰く、「千代、そなたは名将じゃ」
絶妙のタイミングで秀吉を救ったね。
秀吉の行為を正当化しているわけではないので、お間違えなきよう。
そうです。
この場合、完全に非は、秀吉にあります。
誰が何と言っても秀吉が悪いことに変わりありません。
千代は、泣き叫ぶこともできましたし、ひどい仕打ちに怒り、責め立てることもできました。
正直、現代でこんなことが起こったら、間違いなく警察に突き出すべきです。絶対に許してはいけません。
ただ、今回、言いたいことは、そこではなくて…。
千代の逃げ道の作り方がスゴイということが言いたいのですね。
この場合、お互いにバツが悪いのですよね。
秀吉は、もちろん、正座して、借りてきた猫のように大人しく座っているしかありません。
千代は、これはもう、どうするのが正解なのか困惑したことでしょう。
真面目な顔で、何事もなかったようにふるまうか…
少し怒った感じで冷たくするか…
千代は、どちらも選択しませんでした。
おどけた仮面を自分につけて「ばあぁ」と舌を出したのです。
これは、二重の効果があります。
一つは、秀吉のため。
もう怒ってないことを知らせることで、相手の心が軽くなります。
もう一つは、自分のため。
道化の仮面は、千代自身を覆います。
これは、お互いにとって最も良い逃げ道となったのです。
人間関係がこじれる一因は、非のない方が正しすぎること。
自分に非がないのだから、相手を責めても当然…。
まあ、そう思いますよね。だって相手が悪いんだから。
マメムは、20年ぐらい人の相談を受ける仕事をしています。
夫婦関係がこじれたと言って相談に来るのは、たいてい奥さんの方です。
旦那が家に帰って来ないんです。
帰ってきても、口も利かないで寝ちゃうんです。
夫婦関係を良好に保つ秘訣は、コミニュケーションだと奥様たちは理解してるんですよね。
だから、何とか会話をしようと努力をされるんです。
そして、それは、もちろん正しいのです。
けれど、当の相手の方が全く会話を成立させてくれない。
怒り爆発した相談者さんたちは、
私がこんなに頑張っているのにナゼ、アンタは頑張らない!
そう責め立ててしまうのです。
マメムに向かって、クリクリ眼で必死に訴えてくる相談者さんたち。
切なくなりますね。
本当に一生懸命なのですよ。
マメムさん、私のどこが間違ってますか?
いえ、何も間違っていません。
そうですよね。でも、主人は分かってくれないんです!
いやぁ、分かってると思いますよ。
わかってたら、なんで、話し合いに応じてくれないんですか!
ふっ~。
このため息は、心の中だけ。
これは、マメムが本当に日常的にカウンセリングでしていた会話です。
そして、毎回、全員に言います。
彼は、分かっているから話に応じないのですよ。
アナタが怒っていることを相手は分かっています!
ええ、それはもう痛いほど感じていますとも。
だから、帰ってこないのです!
だから、そそくさと寝ちゃうのです!
そうでしょう?
誰が、100パーセント自分が悪い。
言い訳もできない。
それが、わかっていて堂々と話し合いに応じます?
そりゃ逃げるわな…とマメムは思います。
正しさには覆いをかけて。
確かに、相談を受けていると、相談者さんたちの意見は、最もなのです。
そりゃ、相手が悪いわな…
そう言うと、皆さん、満足気な顔をされます。
泣き出す方もいます。
本当に悩んで相談に来られる方は、真面目な方が多いのです。
真剣に悩んで、苦しんで、どうにかしたいと本気で望んでいるのです。
頑張っていますよね。
本当に。
痛いぐらいに伝わりますよ。
もっと自分をほめてあげましょう。
えらい!
えらいよ!
本当にね。
あなたは、何も悪くない。
そりゃ相手が悪い!
もっもだ。
でも、100パーセントなんてない。私も悪いって他の人は言うんです。
そっか…
でもね、マメムはそんなこと言いませんよ。
アナタは悪くない。
ええ。
相談に来られる方は、みんな悪くない人ばっかりです。
頑張って家の用事をして、頑張って人間関係をこなして。自分のための時間なんてなくて。
だからね、考えて欲しいのです。
千代は、正しかったのです。
秀吉は悪かったのです。
けれど、千代は秀吉を逃がしてあげました。
まさしく、「逃がしてあげた」のです。
秀吉が千代を「名将」だと言った理由がここにあります。
「そなたは、名将だ」といった。
人間の心理を見抜いて好きなようにあやつることがうまい、という意味であろう。
秀吉も救われたような気がした。
秀吉も救われたような気がした…
バツの悪さは、秀吉の方が感じていたのです。
だから、千代の「おどけた顔」で、秀吉が救われたのです。
千代は「おどけた顔」で自分の正しさを覆ったのです。
アナタの相手もおそらく同じです。
口や態度では表していないかもしれませんが、「バツの悪さ」を感じているのです。
「やっぱ自分が悪かったんだろうな…」と思っているのです。
心の中で「バツの悪さ」を感じている人をそれ以上に追い詰めてはいけません。
マメムは、アナタの正しさを曲げろと言っているのではありません。
アナタの正しさを「ちょっと何かで覆ってあげて」と言っているのです。
正しさは、腐りませんからね。
ちょっと温存しておいても大丈夫です。
それは、我慢とは違うのです。
正しさには、ちょっと覆いを。
それで相手は救われるのです。
相手の心を救うも滅ぼすも「名将」次第なのです。
ちゃんと話し合いたいなら追い詰めちゃダメ。
もし、千代が「正論」を突き付けて秀吉を責めたらどうなったでしょう。
最初は、シュンとうなだれて聞いていた秀吉も、あまりに追い詰めると、逆上するのではないでしょうか?
それは、もはや「非がある」「非がない」という話ではなくなるでしょう。
怒り狂った天下人は、夫の一豊もろとも一族を滅ぼすかもしれません。
理屈が、まったく通らなくなるってことね。
つまり、キレるってことか。
追い詰められたらね、人は理不尽になりますよ。全く意味の通らない屁理屈をこねますよ。
そうするとね、一番痛手を被るのは、正しい意見を述べているアナタなのです。
相手は、何も考えていませんよ。
ただ、目の前の戦いを有利に進めようと必死なだけです。
できるなら、このまま大声をあげて怒鳴り散らして、煙に巻いてしまおうという魂胆なのです。
そんな人とは、もう話し合いにはなりません。
ただ痛めつけられるだけです。
夫婦関係円満の秘訣は少しのユーモア。目標は、サザエさんだ。
おどけた顔なんて、普通は、できませんよね。
マメムも「やれ」とは言いません。
ただね、生活に少しの「ユーモア」をね。
相手のためにも、そして、アナタのためにも。
つまりね、こういうこと。
いつも完璧な晩御飯を用意しなくてもいいのです。
いつも完璧な掃除でなくていいのです。
仕事も家庭も完璧にしなくてもいいのです。
頑張っているのに、こんな言い方、申し訳ないけれど、はっきり言って、そんな生活、つまらないのです。
そんな生活は、自分を追い詰めてしまうのです。
ときにはズボラでいいのです。
ときにはドン臭くていいのです。
マメムは、これを「サザエさん効果」と呼んでいます。
サザエさんの家、「円満」ぽいでしょ?
サザエさんって、ちょっとズボラでしょ?
足で戸を開けたりするでしょ?
タラちゃんを寝かしつけたら自分が寝ちゃうでしょ?
裸足で駆けてく~でしょ?
サイフ忘れるでしょ?
それでいいのです。
そして、そのズボラとドン臭さを笑い飛ばすのです。
相手と一緒に笑いあえれば、尚よしなんですけどね。
なかなかね。そううまくは行かないでしょう。
でもね、そういうことが、必ずアナタの覆いになりますよ。
だってねぇ、
相手の悪いことを責め立てているときって、自分は失敗しづらいでしょ。
「アンタは、どうして!」って言ってるときに、洗濯忘れてたとか、コップ割れちゃったとか、そうなったら別に悪いことしてるわけでもないのに、なんかバツ悪い思いするでしょ?
隙を見せない生活ってね、ものすごく自分を追い詰めてしまうものなのです。
それにね、アナタのその隙のなさ完全さは、素晴らしいことだけど、相手からすれば、かなり追い詰められてしまうものなのですよ。
なぜって、相手は、アナタが見ての通り「非」だらけの人なのですから。
だからね、
まずは、ユーモアのある暮らしを。
サザエさん見て、「失敗ばかり」なんて思わないでしょう?
いつも楽しそうねって思うでしょう?
アナタのそれも、失敗ではなく「面白いこと」なのです。
「ありゃ、なかなかのサザエさんぶりだな」そう思えばいいのです。
そうすると、視点が変わります。
つまり、少し自分を客観的に見ることができるようになるという事です。
相手の言動が、ユーモラスに見えればしめたものなんだけど。
まずは、自分の言動を笑い飛ばすことが出きればいいですね。
すこぶる楽になりますよ。
それでもね、
もう、そんな余裕もないという方もいらっしゃるかもしれません。
もう、我慢も限界だと感じていらっしゃる方。
それでもね、無理やりユーモアをねじ込んで欲しいとは思うけれど、そんなこと絶対に無理なら…
その時は、超真剣な顔で、静かな声で、座って、「今、話がしたいのだけれど」そう相手に伝えてください。
そして、相手の悪いところではなく、自分の気持ちを話してみて。
この時、「あなたがこうだから、私はつらい」とは言わないで。あくまで、「私は、今、○○だ」と自分の状態を話すこと。
それでも、話し合いができないときは、第三者や専門家に頼ってみて。絶対に一人で抱え込まないで。
でも、できれば、そこまで追いつめられる前に…
アナタの生活が、サザエさんのように「ユーモア」で覆われますように。
そして、毎日、何かしら楽しいことが見つかりますように。